稲佐の浜からさらに北西へ。
海沿いの道を進み、いくつかのトンネルを抜けると、また少し違う日本海の景色が広がります。
海に突き出した岬。
白い灯台。
そして鮮やかな朱色の日御碕神社。
日御碕(ひのみさき)は、海と祈りが静かに寄り添う場所でした。
Contents
日御碕灯台

日御碕灯台は、出雲市の日御碕に建つ白亜の灯台です。
石造灯台としては日本最大級とも言われ、日本海を行き交う船を長く見守ってきました。
灯台の周辺には遊歩道が整備されており、岬からはどこまでも続く海を眺めることができます。

海岸沿いには荒々しい岩場が続き、その向こうには青い日本海が広がっています。
稲佐の浜とはまた違う表情の海。
神話の舞台として知られる出雲ですが、その土地の美しさは海岸線にも静かに息づいています。
灯台のある町を歩く

灯台へ向かう道には、小さな商店や食事処が並んでいます。


観光地ではありますが、どこか親しみやすい雰囲気があります。

軒先には干物が並び、海産物を扱う店が続きます。

洗濯物の代わりに魚が風に揺れている景色は、海辺の町ならでは。
歩いていると、今もこの土地で続いている暮らしの気配を感じます。
日御碕神社


灯台から少し歩くと、鮮やかな朱色の社殿が見えてきます。
青い海と空を背景にしたその姿は、とても印象的でした。
どこか異国の建物を思わせるほど鮮やかですが、そこには古くから続く出雲の祈りが息づいています。

楼門を見上げると、細かな木組みや鮮やかな朱色の美しさがよく分かります。
海辺の町の静かな空気の中で、この建物だけが特別な存在感を放っていました。

昼を守る神と、夜を守る神
日御碕神社には、
太陽の神であるアマテラス(天照大御神)と、その弟で出雲ゆかりの神スサノオ(素盞嗚尊)が祀られています。
二柱は姉と弟の関係です。
神話によると、スサノオは母であるイザナミを失った悲しみから涙を流し続け、その後も荒々しい振る舞いを重ねました。
そのため、姉であるアマテラスは天岩戸へと身を隠してしまい、世界が闇に包まれたという有名な神話が伝えられています。
やがて八百万の神々が天岩戸の前に集まり、歌い、踊り、知恵を尽くしたことで、アマテラスは再び姿を現しました。
その後、スサノオは出雲へと下り、ヤマタノオロチを退治します。
そしてクシナダヒメと結ばれ、出雲神話を語るうえで欠かせない神となりました。
さらに日御碕神社には、少し不思議な伝承があります。
伊勢神宮のアマテラスが「昼を守る」のに対し、日御碕神社のアマテラスは「夜を守る」と伝えられているのです。
昔の人々は、太陽は海の向こうへ沈んだあとも旅を続け、再び東の空へ戻ってくると考えていました。
日御碕から眺める夕日は、まるで太陽が夜の世界へと帰っていくようにも見えます。
日本海へと沈む光を見送りながら、人々はこの岬を、アマテラスが夜の旅へ向かう入口として祈りを捧げたのかもしれません。

神話の中で、アマテラスとスサノオが仲直りしたという話は残っていません。
それでも日御碕では、太陽の神アマテラスと、出雲の神スサノオがともに祀られています。
海の向こうへ沈む夕日を眺めながら、
昔の人々は、二柱の神の物語を善悪や対立ではなく、長い時間の中で受け入れ、祈りの中に残してきたのかもしれません。
海鮮丼をいただく

散策の最後は、海の幸をいただきました。
新鮮な魚介が並ぶ海鮮丼。
海を眺め、神社を歩き、最後にこの土地の恵みを味わう。
そんな時間もまた、旅の楽しみのひとつです。
神々を迎える浜として知られる稲佐の浜については、こちらの記事で紹介しています。
