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水の記憶― 山陰地方へ向かう、伯備線沿線の魅力 ―

1.山陰へと続く線路

山陰地方へ向かうルートの中で、ひときわ印象に残るのが、岡山県倉敷駅から「JR伯備線」に乗る道です。

伯備線を走る電車として知られているのが「特急やくも」。
2024年に改装され、室内は広々とし、外観も黄金色に輝く現代的なデザインへと生まれ変わりました。

それでもなお、伯備線が走る山間地の自然の深さ、迫ってくるような山の厳しさは、どんな技術をもってしても乗り越えられない存在のように思えます。

山陰地方は、日本でも数少ない新幹線の通っていない地域。
けれど、やくもに一度でも乗ったことのある人なら、中国山地の存在感の大きさに、この道に新幹線を通してしまうのはもったいない、とさえ感じるかもしれません。

車内メロディには、山陰地方出身のメンバーで知られるオフィシャルひげダンディズムの楽曲が使われています。
ここでもまた、「変わらないもの」と「引き継がれていくもの」が静かに交差しています。

2.山と川が並走する風景

山間を流れる日野川は、伯備線の線路を見守るように並走しながら、日本海を臨む皆生温泉へとつづいていきます。(皆生温泉周辺についての情報は「温泉地の入口としての役割」の記事で綴っています。)米子市に入ると、新しい日野橋の近くに、旧日野橋の跡地が残されていました。

山の威厳が、水の美しさを守っている。
そう思える景色です。

中国山地の山間では、線路、日野川、国道180号線が寄り添うように走っています。
各駅には地域をPRするキャラクターのパネルやグッズが並び、1両または2両編成の列車が山と川のあいだをゆっくりと進みます。

その姿に、どこかノスタルジックな気持ちになります。

伯備線沿線には、鬼伝説が残る町・伯耆溝口もあります。(→ 伯耆溝口に残る鬼文化の記事

3.山の夜を走る

夏のある日、米子市から車で約30分の江府町で開かれる花火大会へ向かいました。

到着が遅れ、20時30分頃、国道180号線を走っていました。
街灯は次第に減り、祭りはすでに始まっているため車の往来もありません。

そのとき、初めて自然を「こわい」と感じました。

底冷えするような山の闇。
吸い込まれそうな静けさ。
何度も引き返そうかと迷いました。

その瞬間、空がふっと明るくなり、
ぱん、と花火の音が響きます。

真っ暗闇の中に、川沿いをうちわで風を送りながら歩く人々の姿が浮かび上がりました。
橋の上から花火を見上げる人の気配。

そこでようやく、安堵しました。

4.「畏い」という感覚

山に挟まれたこの地域では、町から町までの距離が思いのほか長い。

日中は美しい道も、夜になると、ただ静けさだけが残ります。

そのとき初めて、山の自然を「畏い」と感じました。

けれどその厳しさこそが、川の水を澄ませ、
六月下旬から七月にかけては蛍の光を川面に浮かび上がらせます。

5.人の灯り

8月17日は、江府町で行われる「江尾の十七夜」。
無形民俗文化財にも指定されている「こだいじ踊り」が受け継がれ、地域PRキャラクターえびちゃんの誕生日でもあります。

花火が上がるたびに響く歓声。
屋台のにぎわい。
山の闇は、いつの間にか人の光に包まれていました。

江府町の手前、日野町には「リバーサイド日野」という宿があります。

蛍やオシドリ、花火や満天の星空。
自然と向き合う時間は確かに豊かです。

けれど、コンビニや飲食店の少ない山の静けさの中で、
広い食堂や大浴場の湯気に出会ったとき、
人の灯りのあたたかさに、肩の力がすっと抜けました。

この土地の物語

鬼っ子ランド

日野川沿いの宿

リバーサイドひの

この地域周辺の宿泊施設は、こちらの予約サイトからも検索できます。

山陰の夜には、
静かな道がいくつかあります。

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青い青い海|日本海を眺める夜の逃避行